こんにちは!
子どもの笑顔を守る小児歯科医の中野です。
今回は「離乳食と歯並びの関係」について解説していきます。
皆さんは「歯並びって、遺伝で決まるんじゃないの?」なんて思っていませんか?
実はそれ、半分正解で半分間違いです。
もちろん骨格などの影響はありますが、実はそれ以上に0〜1歳の食べ方やお口の使い方が、将来の歯並びに大きく関わってきます。
「離乳食の与え方なんて、そんなに影響あるの?」と思うかもしれませんが実際に、
・将来、歯ならびがガタガタになる
・噛みづらくなる
・矯正が必要になる
こういったことの入口は、離乳食期から始まっていることが多いのです。
でも安心してください!
今日のBLOGでは、専門的な知識がなくてもちょっとした工夫でできる、お子さんの「顎の発達」や「噛む力」「口を閉じる力」をしっかり育てる方法をお伝えします!
この時期だからこそできる、お口の土台づくりです。
「矯正に頼らない、自然で整った歯並び」を目指したいママ・パパは、ぜひ最後までお読みください!
1 歯並びは遺伝だけではない
「歯並びは親に似る」とよくいわれますが、もちろんそれだけではありません。
確かに、顎の骨格や顔立ちなどはある程度遺伝の影響を受けます。
でも実際に歯がどう並ぶか、「歯列」の美しさや噛み合わせの良さは、生まれつきではなく、育て方でも大きく変わります。
ここで注目してほしいのが「生活習慣」と「環境」です。
特に赤ちゃんの時期にどんな姿勢で過ごしているか、どんな風に食べているか、どのように口を使っているかが、歯が並ぶスペースの形成や顎の成長に深く関係してきます。
「遺伝だから仕方ない」とあきらめる必要はありません。
育て方次第で、歯並びはある程度コントロールできるのです。
ではその育て方とは具体的にどんなことを意識すればいいのでしょうか。
ここからは、影響が大きい「離乳食」の関わりについて、詳しく解説していきます。
2 なぜ「離乳食」が歯並びに関係するのか
離乳食と聞くと、「食べる練習」「栄養をとるステップ」としての役割が思い浮かぶかもしれません。
でも実はそれ以上に大切なのが、赤ちゃんがお口の機能を育てるための時間であるということです。
この時期の赤ちゃんは噛むことで顎の骨を刺激し、舌を動かして飲み込み方を学び、唇や頬の筋肉を使いながら、お口の機能を一つひとつ身につけていきます。
まさに、離乳食はお口の筋トレなのです!
逆に、やわらかすぎるものばかり食べる、足を投げ出し猫背で食事をする、口いっぱいに食べ物を入れる与え方など、お口の機能を十分に使わない日常の小さな習慣が、知らないうちにお口の発達を妨げてしまうこともあります。
この時期にしっかりと「噛む」「口を閉じる」「自分で飲み込む」といった経験を積むことで、お口の土台がぐんと育ち、歯並びの良さにもつながっていくというわけです。
だからこそ離乳食は食べさせ方や自分で行った時の失敗経験の積み重ねが大切です。
ここまでのお話で、将来の歯並びは毎日の食べ方や口の使い方でつくられていくということが伝わったのではないでしょうか。
ここからは、小児歯科医の視点から、離乳食期にぜひ取り入れてほしい5つの工夫とその理由をご紹介していきます。
3 今日からできる!離乳食の5つの工夫
①しっかり「座って」食べることを大切に
1つ目は「しっかり座って食べる」です
赤ちゃんが食べているとき、背中が丸まっていたり、首がグラついていたりしませんか?
実は姿勢が安定しないと、お口の動きや舌の使い方も育ちにくくなってしまいます。
おすすめは、足が床や台にしっかりついて腰が立っている姿勢。
こうすることで、噛む・飲み込むといった動作がスムーズになり顎の発達や飲み込む力も自然と育っていきます。
座る姿勢が安定していると、体幹も整い、食事中の集中力にもつながります。
離乳食の時間が「学びの時間」に変わるため、将来の正しい姿勢づくりの第一歩にもなりますよ。
②スプーンはひと口ずつ口を閉じられる量で
2つ目は「スプーンはひと口ずつ口を閉じられる量」です。
口の中にスプーンでどんどん食べ物を入れてしまっていませんか?
量が多すぎると、赤ちゃんはお口を開けっぱなしにしたまま食べることになってしまいます。
また、よく噛んで食べるためにはお口の中で左右に並んでいる歯の上に食べ物を舌で動かして運ばなければなりません。
しかし、お口一杯の状態では舌は左右に動かないため、十分な咀嚼ができませんよね。
お口を閉じる力(=唇の筋肉)や舌の左右への動きを育てるには、ひと口の量がとても大切です。
スプーンに盛る離乳食の量は少なめにして、赤ちゃんが自分でお口を閉じてごっくんできる量にしましょう。
また、お口を閉じて飲み込む動作を習慣づけることで、自然と鼻呼吸が促され、「お口ポカン」や「口呼吸」など将来のトラブルの予防にもつながっていきます。
③ ペーストばかりではなく形のある食事へステップアップ
3つ目は「ペーストばかりではなく形のある食事」です。
つぶし粥やポタージュのようなペースト状のやわらかい食べ物は、飲み込む練習にはなりますが、噛む力はあまり育ちません。
もちろん時期に応じて無理は禁物ですが、赤ちゃんの様子を見ながら、少しずつ噛む経験ができる食材を増やしていきましょう。
たとえば、柔らかくゆでた野菜を大きめにカットして、手づかみで口に運ばせるのもおすすめです。
「自分で持って、自分で噛む」という一連の動作は、顎や舌、手の動きの協調性を育て、脳の発達にも良い刺激を与えてくれます。
④スプーンの入れ方にひと工夫を
4つ目は「スプーンの入れ方」です。
意外と知られていませんが、スプーンの使い方もお口の発達に大きく関係します。
赤ちゃんにスプーンで食べさせるときは、「上唇で食べ物をとる動き」が自然に出るように意識してみましょう。
そのためには、スプーンを赤ちゃんの視界に入るような水平の角度で差し出し、赤ちゃんが自分から口を閉じて取り込む”流れを大切にしてみてください。
この「唇を使って食べ物をとる」という動作は、口の周りの筋肉(口輪筋)を刺激し、将来的な「滑舌の良さ」や「表情筋の発達」にもつながります。
口元がキュッと閉じられることは、将来の美しい表情の土台にもなっていきますね。
⑤よく噛めるメニューで、顎を育てる
離乳食後期(9〜11ヶ月頃)から完了期(1歳〜1歳半頃)にかけては、よく噛むことが顎の成長や歯の並びに直結する大事なステージになります。
とはいえ、固いものを無理に与える必要はありません。
たとえば、蒸したさつまいもスティック、煮た人参スティック、小さく切った高野豆腐など、歯ぐきでも噛めるやわらかさで、なおかつ「しっかり噛む動き」が必要な食材がおすすめです。
噛むことで、顎の骨によい刺激が入り、血流も促進されて、骨の成長が活発になります。
さらに、噛む回数が増えることで、満腹中枢が刺激され、食べすぎ防止や肥満予防にもつながるという嬉しい効果もあります。
4 まとめ
今回は『離乳食と歯並びの関係』についてお伝えしました。
歯並びは遺伝だけでなく毎日のちょっとした習慣で大きく変わることがあります。
そして、0〜1歳の離乳食期こそが、お口の使い方・噛む力・舌や顎の発達を育む「ゴールデンタイム」です。
ちょっとした姿勢の工夫、スプーンの使い方、噛む回数を意識することだけでもお子さんの将来の歯並びやお口の健康に、確かな土台を作ってあげることができます。
「今、やってることが将来につながっている」そう思うと、毎日のごはんの時間も、少し楽しくなってきますよね!
お子さんのお口に関する不安やご相談があれば、いつでもクリニックにご相談くださいね。
それでは、また次回のBLOGでお会いしましょう。またね〜!